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「バーミヤン」


 「バーミヤン」という地名を聞いたことがあるでしょうか。


 「西遊記」の中で三蔵法師が旅の途中で訪れる場所として登場します。
また「バーミヤンの大仏」について聞いたことがある人もいるかもしれません。



写真左:バーミヤン大仏全景。写真右:西大仏跡。


 バーミヤンはアフガニスタンのほぼ中央に位置し、首都カブールから飛行機なら約30分ですが、商業便が運行しておらず、陸路であれば6時間以上かかります。


 首都カブールでも標高は1800メートルほどありますが、バーミヤンは標高が約2500メートルもあります。富士山の6合目くらいのところに町があるわけです。




 この辺りは2、3世紀頃から仏教が栄え、6世紀頃に二体の巨大大仏、いわゆる「バーミヤンの大仏」が造られたと言われています。


 しかし現在の遺跡に大仏はありません。2001年、偶像崇拝を徹底的に排除しようとしたタリバンに破壊されてしまったのです。その様子は世界中のメディアでとりあげられ、多くの人に衝撃を与えました。その後、大仏を含む地域一帯は、2003年、世界遺産に登録されました。


 現在のバーミヤンはとてものどかなところです。治安が不安定なアフガニスタンにおいて、例外的に比較的治安が安定しています。


 一方で、現在のバーミヤンはアフガニスタンの中でも非常に貧しい地域です。電気も上下水道もありません。多くの県民は農業を営んでいますが、食糧が途絶えてしまうこともあります。



写真左:バーミヤン中心部近くの村。県民の85%は農業に従事。
写真右:電気・水道などの基礎インフラは未整備。水汲みは女性や子供の日課となっている。



 2001年にタリバン政権が崩壊して以降、アメリカを中心とした先進国はアフガニスタンに援助を行ってきました。しかしその開発援助の多くは南東部の治安が不安定な地域に、治安の改善を目的として割り当てられてきました。


 その結果として、治安の比較的いいバーミヤン県は海外からの援助をほとんど受けられずにいました。そのため、バーミヤンの人々は自らを「忘れられた県」と呼んでいます。


 そのようなバーミヤン県の置かれている状況を少しでも改善すべく、日本はバーミヤン県を重点地域として支援しています。


 2003年以降、農業支援、識字教育支援、地雷除去支援、遺跡保存の支援などを行ってきました。今年はバーミヤン県内で23校の学校を建設する他、バーミヤン空港や道路の整備を行う予定です。



写真左:バーミヤン中心部にある学校の様子。
写真右:学校や教室が足りず、テントを張って教室として使っているところも


 数々の自然・文化遺産を有するバーミヤンは将来、観光地として発展していく可能性があります。長年の戦争で忘れ去られてきたバーミヤンの人々の生活を改善し、県の経済発展につながるような支援をしていきます。