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髙橋駐アフガニスタン大使のバーミヤン訪問
平成23年6月20日~22日

6月20日~22日、髙橋礼一郎駐アフガニスタン大使は、アフガニスタン中部に位置するバーミヤン県を初めて訪問しました。バーミヤン県は7月から順次始まる権限移譲プロセスで、最初に権限移譲が行われる7つの地域の一つです。

訪問中は、ハビバ県知事をはじめ、県政府の髙官、バーミヤンPRT(Provincial Reconstruction Team: 地方復興チーム)、国際機関の担当者らと面会し、権限移譲にあたりバーミヤン県で今後どのような支援が必要とされるのか意見交換を行った他、日本の支援で実施中の道路建設や識字教育などを視察しました。


(写真左)ハビバ・バーミヤン県知事と髙橋大使。(写真右)UNESCOを通じて支援している女性の識字教室の様子。

また、平成22年度草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて支援を行っているバーミヤン県ヤカウラング郡クプロック村の保健クリニックの着工式にも参加しました。クプロック村は、バーミヤン県の中心から車で3時間弱、こんなところに人が住んでいるのだろうかと不安になる頃、茶色の丘の合間にようやく見えてきます。 この村ではこれまで民家を利用してクリニックを運営してきました。日本の支援で診察室や分娩室などを備えたクリニックが建設されれば、クプロック村の140世帯だけでなく、近隣の20村の住民が、設備の整ったクリニックで診療を受けることができるようになります。

(写真左)建設中のクプロック村の保健クリニック。(写真右)着工式に参加するハビバ県知事と髙橋大使。

クプロック村では、住民との対話集会にも出席しました。ここで髙橋大使から、先般の東北大震災の際にバーミヤンから寄せられた支援のメッセージに感謝の意を表すとともに、クリニック建設にあたり地元住民の協力を呼びかけました。住民からは感謝の意を込めて、アフガニスタンでは結婚式など特別なとき行われるブスカシというスポーツが大使一行の前で披露されました。ブスカシは馬に乗った男性が旗をとりあう競技で、昔は山羊をとりあったと言われています。馬が土埃をあげながらアフガニスタンの草原を勇猛果敢に駆け回る姿は圧巻でした。

(写真左)クプロック村住民との対話集会。(写真右)アフガニスタンの国技ブスカシ。

権限移譲はこれまでNATO/ISAFが担ってきた治安維持の機能を、アフガニスタン政府に引き渡していくプロセスです。しかし、権限移譲が成功するためには、軍や警察の機能強化だけでなく、地方政府が本来の行政機能を備え、住民に保健・教育・雇用などの社会サービスを提供し、ひいては社会が安定することが不可欠です。そうした意味で、クプロック村のような県中心部から遠く離れた場所にもクリニックを建設し保健サービスを拡充することが、バーミヤン県の権限移譲プロセスの支援につながると考えています。

日本はこれまでバーミヤン県で地雷除去、教育、保健、農業、文化遺産の保護、道路建設、元兵士の再統合等の分野で支援を行ってきました。今後もバーミヤン県の権限移譲プロセスが平和裡に行われるよう、各種分野で支援を続けていきます。



【参考】権限移譲(Transition)プロセスとは、現在、NATO/ISAFが主たる役割を果たしている治安維持を中心とする行政権限をアフガン政府側に徐々に移譲していくプロセス。今回、権限移譲が開始された7地域は、カブール県のスロビ郡を除く全域,パンジシール県全域,バーミヤン県全域,ヘラート県ヘラート市,ヘルマンド県ラシュカルガー市,バルフ県マザリ・シャリフ市,ラグマン県モフタラーム市。本年3月22日(火),カルザイ大統領は本年7月頃から国内7地域において治安権限の移譲が開始される旨発表。

【参考】PRT(Provincial Reconstruction Team: 地方復興チーム)とは、その組織や活動の態様はそれぞれ様々であるが、一般に、各国が派遣している軍人及び文民復興支援要員から構成される軍民混成の組織であり、平均的には軍事要員が100名から200名程度、文民要員が数名から10数名で構成される。文民要員については、外交官、開発省・機関職員、警察官に加え、復興開発ニーズに沿った職員が派遣されている。その任務は、治安が不安定なため復興活動にも支障が生じているアフガニスタンにおいて、治安改善と復興事業を同時に推進することによって、開発支援の成果を挙げ、もってアフガニスタン政府の影響力の地方への拡大を支援することである。