駐アフガニスタン日本国大使の髙橋博史です。

 私のアフガニスタンとの関係の始まりは,1970年代のカブール大学留学でした。当時はまだ,ダーウド大統領が統治している時代でした。その後,1980年代から90年代にかけて,在パキスタン日本国大使館でアフガン担当として勤務していた頃,アフガニスタンは,ソ連との「聖戦」と内戦の真っただ中でした。その後,外務本省や中央アジア,国連政務官としてのアフガン勤務を経た後, 2012年10月から,特命全権大使として当地にて勤務しております。

 アフガニスタンという国は,その近現代史において,世界でも稀に見るほど数奇な運命を辿ってきました。19世紀前半には大英帝国との2度の戦争,20世紀後半には約9年に及ぶソ連との戦争とそれに続く激しい内戦,さらにはタリバーンの台頭。そして21世紀初めには,米軍を主とする多国籍軍の攻撃によるタリバーンの崩壊と,数多くの戦争・紛争に直面してきました。その結果,アフガニスタンの産業やインフラは破壊し尽くされ,多くの国民が難民として国外に流れ,アフガン国民の心には深い傷が刻まれました。

 我が国は,アフガニスタンが自立し,二度とテロの温床となることがないよう,2001年から本格的な支援を開始し,2度の支援会合の開催,総距離約700kmに及ぶ幹線道路や同国の空の玄関であるカブール国際空港の整備,800校を超える学校建設,約60万人への識字教育,約100件の病院・クリニックの建設・整備等を通じ,これまでに約5000億円相当の支援を実施してきました。 

 アフガニスタンは,2014年に大きな転換期を迎えます。4月には大統領選挙が予定されており,アフガン史上初といわれる民主的な形での政権交代が達成されるか国際社会の注目が集まっています。また,米軍を主力とする国際治安支援部隊(ISAF)の2014年末までの撤収も決定しています。

 当館としては,今後もアフガン情勢を注意深く観察・分析し,国際社会の一員として,アフガニスタンの平和構築と発展への貢献を追求していく所存です。

アフガニスタン・イスラム共和国駐箚
特命全権大使
高橋博史